医院ブログ

2017.01.07更新

今回は、近頃、有名人の発病を伝えるニュースなどで伝えられることもある、急性膵炎について述べさせていただきます。
その前に、膵臓って、身体のどの辺りにあって、どんな働きをしているのかご存知でしょうか?
場所(部位)は胃の奥(背中側)で、上腹部の正中より少し左寄りに位置し、マイクのような横長の形状をしています。
働きは、大きく分けて二つ。①〔外分泌機能〕食べ物の消化に欠かせない消化酵素(アミラーゼ、リパーゼ、トリプシン等)を作り、それらを膵管という管から小腸へ流し、文字通り栄養素の消化に一役買っています。②〔内分泌機能〕インスリンやグルカゴンといったホルモンを出して、血糖値をコントロールしています。これが狂うと、ご存知糖尿病を発症します。
急性膵炎の原因はこの働きの①に関連があります。この時期お酒のおつきあいも多いため、ついつい飲み過ぎがちで、この過剰飲酒が引き金となることが多いのです。通常、膵臓の中にある消化酵素は膵臓から十二指腸へ排出されてはじめて、酵素が活性化して、食物の中の栄養素を分解しますが、過度な飲酒刺激は膵内での消化酵素を活発化させます。いわゆる、膵臓の自己消化叉は自己融解という、自傷(自殺)行為が急激な経過で進行していくのが急性膵炎です。飲酒以外の原因では、胆石や特殊な内視鏡検査などにより膵液の流れがせき止められるなどして発症します。
症状は、持続する強い上腹部痛や背部痛、腸の麻痺を伴うと吐き気や嘔吐も見られます。加えて発熱したり、重症化すると急性腎不全や呼吸不全を伴ったり、DICといって血液が異常に固まったり逆に出血が止まりににくくなったりする全身に及ぶ障害を生じることがあり、大変危険です。この様な状況に対して、根本的な膵炎の治療方法はなく、あくまで、点滴などで水分補給をしたり、二次感染に対処する目的で抗菌剤を投与したりする対症療法を行い、自然回復を後押しする事くらいしか出来ません。
ですから、なってから治す事よりは、ならないようにする方が肝腎で、なかでも心がけておきたいのが、アルコールを飲み過ぎないようにする意識です。普段、飲みつけなない人がたまの宴席などで多量飲酒して発症すると言うよりは、常日頃から一定量の飲酒(ビール1.5l叉は日本酒3合弱以上)をしている方が、普段以上に飲酒した際に発症されている事が多いので、このような飲酒習慣のある方は要注意です。ついでに、高トリグリセライド血症(血中の中性脂肪が高値)も単独でも膵炎の原因となり、飲酒せずとも遺伝や生活習慣で中性脂肪が増えすぎて、膵炎を発症する場合もありますので、飲酒によりさらに中性脂肪も異常高値となり、より膵炎が発症しやすい状況となりうる場合もあります。このことからも飲酒量は控え目にして、食事では動物性脂肪をとり過ぎず、適度な運動を継続して行うことが中性脂肪の上昇を抑えるために重要です。ただし、ご自分の努力だけではなかなか中性脂肪が下がりにくい場合は投薬も治療の選択肢の一つとなります。

投稿者: 内科・消化器内科 杉本クリニック