医院ブログ

2018.05.27更新

染性(胃)腸炎はノロウイルスをはじめとした‘ウィルス性’が冬季を中心に蔓延しますが、5月から6月と10月に多いといわれているのが、カンピロバクターという‘細菌’が引き起こす腸炎です。
【感染原因・感染経路】
食肉特に鶏肉からの感染が最も多いといわれています。特に鶏肉の不十分な加熱や鳥刺しなどの生食では感染のリスクが上がります。この菌は高温や乾燥に弱い反面、比較的低温(4℃)では生存するため、冷蔵庫保存されたものは要注意です。
また、食肉以外では犬や猫といったペットとの接触でも感染の報告がありますし、感染者の便からヒト-ヒト感染することもあります。
【潜伏期・症状】
潜伏期は平均2-5日を経て、発熱、頭痛、腹痛、下痢、嘔気(嘔吐)などの症状が生じます。半数程度では血便がみられます。大抵は数日で自然に回復しますが、小児や高齢者又は抵抗力が低下している状態ではまれに重症化することがあります。
感染原因を特定する目的で便の細菌培養検査を実施し、カンピロバクター・ジェジュニが検出されれば、カンピロバクター腸炎(以下、カンピロ腸炎)が確定します。
【治療・経過】
 加熱不十分な鶏肉などの摂取歴や症状経過から、カンピロ腸炎が疑われているものの、来院時の症状が然程軽くなっていない場合は、抗菌剤の内服をお勧めしています。カンピロ腸炎なら大方はそれから2-3日で症状が改善します。
 血便が見られる場合は、一応大腸内視鏡検査をお勧めしています。というのも、ほかの感染性腸炎(O-157などの腸管出血性大腸菌)などや虚血性大腸炎、潰瘍性大腸炎、大腸がんなども鑑別を要する場合があるためです。
また、頻度は少ないものの腸炎が治って2-3週間後に急速に進行する筋力低下や時に呼吸筋麻痺となる合併症〈ギランバレー症候群〉を来すことがあり、脱力症状などが見られる場合は早期の受診(重症例では救急搬送)を要することあります。

当院で経験したカンピロ腸炎の患者さんの中には、鳥刺しを一緒に食べた家族の中に発症しなかった方がおられたというお話もあり(大多数は同じものを食べた方々は一様に同じ症状を呈しておられますが・・)、個々の免疫力で発症にばらつきがあるらしいことも実感していますが、個人的には‘鶏肉生食’は余程腸管の免疫力に自信のある方を除いては、避けられたほうがよいのではないかと感じる、今日この頃です。

 

投稿者: 内科・消化器内科 杉本クリニック