医院ブログ

2016.07.19更新

今回は肝臓の病気の一つである慢性肝炎について書かせていただきます。その前に、肝臓って、どこで診てもらえるのかって事を度々耳にしますが、如何でしょうか?肝臓内科とか、肝胆膵内科のように肝とつけば分かりますが、普通はクリニックや病院で消化器内科が肝臓病も担当しています。当院も例外ではありません。消化器というと、胃や腸といった『管』状臓器を意味しますが、位置として胃腸と近くお互いに血管などのつながりのみならず、栄養素の取り込みや合成では密接に連携しあっています。よって、広い意味での消化器系臓器にふくまれています。
話が脱線しました。慢性肝炎に戻ります。年単位から10年単位にわたって、ジワリジワリと肝臓の細胞が破壊され続けると、肝臓が硬く縮んで働きの鈍った状態である肝硬変になり、さらには肝臓がんが発生してしまうという一連の流れがあります。基本的には、肝臓は余力の十分ある臓器ですので、肝細胞がジワジワ破壊されていても(健診データでALT正常値30以下のところが40~せいぜい200位まで上昇しても)、症状は殆どでません。よって、定期的な健診を受けていないと、まず早期診断が成されず治療時期を逸してしまいます。20年前になりますが病院で当直をしていて、突然の激しい腹痛で救急搬送された患者さんが、実は肝臓がんの破裂(がんが自然に割れて、お腹の中に大量出血)と判明し、なんとか緊急カテーテル治療を行いその場は一命は取り留めました(半年後に肝不全で亡くなられました)。この患者さん本人は肝がん破裂するまで全く自覚症状もなく、健診なども受けておられなかったため肝臓が悪いとは露ほどにもご存知なかった事には正直驚きました。
とことで、慢性肝炎の原因として問題となっているのが、ウィルス性肝炎です。そのほとんどを占めるのは、B型肝炎(20%)とC型肝炎(70~80%)です。
今回はC型肝炎について述べさせていただきます。大方は血液を介して感染しますので、1989年以前(C型ウィルスの発見される前)の輸血、刺青や覚醒剤注射の回しうちなどによって感染されていることが多いとされていますが、中には全く感染経路がわからないケースもあります。基本的に感染力は弱く、食器や洗濯物、出産及び授乳、性行為等では感染することは少ない考えられています。
感染の心配のある方はお近くの医療機関や肝炎ウィルス健診(お近くの保健所や厚労省HP参照)にお問い合わせ下さい。実際の流れとしては血液検査でHCV抗体を測定し陽性反応を確認した後にさらに詳しい検査(ウィルス量やウィルス血清型などの血液検査、腹部エコー検査など)を追加し、現時点で治療が必要な状態かを判断されます。
治療法は、以前ではインターフェロン(IFN)を中心とした、いわゆる副作用の’しんどい’治療しかありませんでした。インフルエンザ的な高熱、鬱症状などが辛すぎて治療が最後まで完遂出来ず、ウィルスを撃退に至らないまま治療を中止しまったということが少なくありませんでし、IFN治療が生まれつき効きにくいといった方もおられれ、IFN治療には越えられない限界が存在していることが判ってきました。
それに代わって、この2ー3年前から登場したインターフェロンフリー治療(IFNを使用しない)治療法が登場しました。注射不要で内服のみで済みますし、IFNのしんどい副作用からは解放され、何よりIFN以上の高い効果が期待できるのです。高額な治療ですが、国の公費助成の対象にもなっており、3~6ヶ月間の治療期間での自己負担額上限は月額2万円(または1万円)です。
C型肝炎にお心当たりがあったり、以前から判っていてもなかなか治療に踏み出せなかった方は是非とも一度ご相談ください。
ちなみに公費助成の申請書は日本肝臓学会の専門医(小生も有します)にしか作成資格がありませんので、まずは医療機関にご確認ください。

投稿者: 内科・消化器内科 杉本クリニック